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【JTB海外駐在員コラム】ドイツ編①~先入観の向こう側、ドイツの今~「仕事観と休暇法」「サービス砂漠」

JTBグループが国内外の独自のパートナーシップの構築により日本企業の海外進出をサポートするラピタでは、
JTBの海外支店とのネットワークを活用し、海外進出をサポートいたします。今回から、海外に駐在するJTBの若手社員によるコラムの掲載を開始します。

第1回は、ドイツ(フランクフルト)の駐在員から、現地で感じた生の声をお届けします。


 皆さんはドイツに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。ビールにソーセージ、幼少期に一度は読んだことがある赤ずきんの童話やヘンゼルとグレーテルで有名なグリム兄弟もドイツで生まれ育ちました。

日本よりも国土が広そうに思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は日本と面積がほぼ同じです。

モノ作りの国という観点からも、ヨーロッパの国々の中で比較すると、ドイツと日本はよく似ているといわれています。今回はフランクフルトに駐在し、私が感じたドイツの実情についてお伝えします。

フランクフルトの魅力とは?

 フランクフルトはご存知の通り、世界最大級のハブ空港があり、ヨーロッパを旅行したことがある方はフランクフルトを経由した経験が多いかと思います。また、鉄道においてもヨーロッパ最大級のターミナル駅であるフランクフルト中央駅があり、いつも観光客やビジネスマンで賑わっています。主要な交通手段でのアクセスが良いため、現在は欧州中央銀行をはじめ、多くの金融機関の本拠地が集まる国際金融都市であり、メッセ・フランクフルトでは世界最大規模の見本市や展示会が連日行われています。そのため、フランクフルトを訪れる来訪者は観光よりも業務出張を目的とする方が上回ります。

 フランクフルトの正式名称は「フランクフルト・アム・マイン」で、「マイン川湖畔のフランクフルト」を意味します。その名の通り、街の中心にはマイン川が悠々と流れ、季節の良い時期には河川敷でジョギングをする人、サイクリングをする人、ピクニックやバーベキューをする人などで賑わい、地元市民の憩いの場となっています。またフェルメールの「地学者」やボッティチェリの「女性理想像」などを所蔵するシュテーデル美術館をはじめとする数多くの美術館や博物館も川沿いに軒を連ねます。

 この自然と歴史的建造物が上手く調和して立ち並ぶ景観と、ヨーロッパでは珍しい印象的な金融街のスカイラインという両側面を持つ街がフランクフルトです。

続いて、現地の人々との交流を通じ、私が感じた「先入観とは異なるドイツの様子」についてご紹介します。

ドイツ人の仕事観・労働環境について

 はじめに感じたことは、ドイツ人の仕事観や労働環境の違いです。例えば、日本ではその日に仕上げるべき仕事がある場合、その日中に終わらないと帰らないというスタンスが多いですが、ドイツでは異なります。

 「企業に就職する」という考え方が強い日本に対し、ドイツでは「企業と働く条件を承諾し、契約を結ぶ」という考え方が一般的です。ドイツで働く際は雇用主と被雇用者との間で締結される契約書が非常に重要な役割を果たし、労働時間や休暇が盛り込まれた契約書に基づき労働環境が保障されます。休暇に関しても「休暇法」が存在し、「被雇用者であれば誰もが年次休暇を(日曜日を除く)最低24日間取らねばならない」と定められています。雇用主は従業員に休暇を取らせる義務があり、遵守されていない場合、罰則が与えられます。

また、日本では病欠の場合、有給休暇を利用することが多いですが、ドイツでは病欠は有給休暇を利用しません。このため、ドイツの会社では年間平均約30日の休暇を取得し、2週間~4週間連続で休みを取ることも抵抗がありません。現地の方の話によると、ドイツ人は休暇を取るために働いているといっても過言ではないそうです。仕事と、家族との時間やプライベートの時間にメリハリをつけるところは学ぶべきところかもしれません。

サービスに対する考え方の違い

 ドイツはよく「サービス砂漠」という言葉で表されます。スーパーやレストランに行ってもまともに対応してもらえず、店員もぶっきらぼうだったという話は日常茶飯事です。私自身も、携帯している鉄道の定期がどの範囲(ゾーン)まで適用され、どこまで乗れるのかを鉄道のトラベルカウンターに聞きに行ったところ「これはあなたのカードなのだから、あなたが使い方を知っておくべきだ、私はそんなもの知らない」と言われて突き返さたという経験があります。また、ドラッグストアに足を運んだ際、夕刻の仕事帰りの買い物客で混み合う時間帯に、レジで長蛇の列を作っていても、レジ担当は一人だけで、他の従業員は大きな運搬カートを通路の真ん中に置いて商品陳列をせっせとこなしているという風景もよく見かけます。日本のコンビニエンスストアでは、たとえ商品陳列を行っていても、レジにお客様が来ると店員が即座に対応する光景が多いかと思います。

 これは「サービス」に対する価値観の違いによるものでした。ドイツではホテルのラインナップを見ても、イギリスのサヴォイやドーチェスターといった超一流ホテルの数は多く存在せず、セレブが利用するようなレストランも閑静な高級住宅街にひっそりと佇むヴィラ形式でシンプルな内装といったものが好まれます。人々の生活からも「素朴でシンプル」という言葉が合うように、ドイツ人は「良質」を求める際に、「サービス」はあまり求めません。日本ではサービスは無償であり、「おもてなし」という言葉が存在しますが、欧米ではサービスは無償ではないという認識が一般的です。だからこそ今でも「チップ制」が残っているという背景があります。

他のヨーロッパの国々と比較するとドイツは比較的物価が安く、過剰包装になりがちな日本と比べると良質なサービスや丁寧なパッケージングよりも、モノ自体に価値を見出し、対価を支払うことがドイツ流といえます。ドイツ人の友人でさえも、ドイツ人のサービスの悪さに対しては慣れており、むしろ諦めているといった感想でした。

 営業時間に関しても日本やアジアの国とは違い、24時間営業のコンビニやスーパーはなく、日曜日は一部の観光地を除き、ほとんどのデパートやショップが閉店します。日本でよく見かける、日曜日に家族連れで大型商業施設で時間を過ごすという光景もドイツではあまり見かけません。日曜日、多くのスーパーマーケットは閉店していて、パン屋とカフェくらいしか開いてないことも多いので、ドイツにお越しになるご予定のある方はご注意下さい。

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