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【マレーシアコラム】ハラル化粧品のビジネスチャンス

ハラル化粧品市場の大きな空白

「ハラル」。私はマレーシアに駐在して初めて、その言葉を聞いた。

イタリアンレストランで、メニューを見て、生ハムは...、ない。そうそう、イスラム教の国だから、豚は食べられないのかと思い当たり、友人に尋ねてみると、ハラルのレストランだからという。 ハラルって何?

インターネットで調べてみると、いくらでも説明があった。
「ハラル」とは、イスラム教の神が"許したもの"のことで、ダメなものは、「ノンハラル」というらしい。
イスラム教徒は豚を食べない。豚だけでなく、アルコールもダメ。もっと細かくいうと、魚、鳥や牛も、イスラム教の作法に従って解体、精肉されていないものは、ダメなのだ。

そういえば、今イスラム教の国に住んでいるのだと思い直し、イスラム教の聖典、コーランを読んでみた。コーランには、イスラム教徒が生活する上でのきまりが、細かく書かれていて、結構面白い。これはよくて、あれはダメと、実に明確で現実的、合理的。イスラム教徒ではない私でも、なるほど、ごもっともと思うことが多々ある。

そんなハラルが、昨今、様々な業界で話題になっているという。マレーシアにいるにもかかわらず、そんなことが、ビジネスになるとは、全然ピンとこない。30年以上も化粧品に関わってきた小生なのに、ハラルの化粧品というものは、見たことも聞いたこともなかったからだ。さてさて、化粧品を生業とするものとして、知らないでは済まされない。早速、ハラル化粧品の市場調査を試みた。

いつくかの百貨店を回ってみたが、どうやら、百貨店の化粧品コーナーにはハラル化粧品(※)はない。国際的な有名ブランドは、ハラル化粧品を販売していないのだ。
ところが、ドラッグストアに行ってみると、なんと、ハラル化粧品が棚いっぱいに並んでいる。なるほど、ハラル化粧品の市場は確かに存在している。

ただし、いずれも低価格に属するものばかり。もっとも高いものでも、50リンギ程度(約1,500円)。
インターネットでも調べてみた。メーカーに聞き取り調査もしたが、どうやら、マレーシアには、高級なハラル化粧品は存在していない。少なくとも一般的な販売ルートには高級なものはない。
さてさて、30年以上も化粧品に関わり、ひたすら高級品を商っていた小生の常識でいうならば、世の女性は、化粧品に限らず、高級品が大好きだ。それはイスラム教徒の女性でもかわらないはず。

化粧品のビジネスマンとして、大きな疑問、そして、ムラムラと心の底から湧きあがるものがある。ハラル化粧品の市場に"高級品がない"。この大きな空白の存在に、ビジネスチャンスを感じられずにはいられない。

なぜ、大手ブランドは、ハラル化粧品市場に踏み込んでいないのか。
なぜ、ハラル化粧品には、高級品がないのか。

ハラル認証(※)のためか、製造技術のためか、化粧品各社のマーケティング、ブランディング等々、理由はいろいろと想像できるが、大手ブランドがあえて踏み込まず、地元マレーシアの化粧品メーカーも埋めることのできない大きな空白を、黙って見過ごす訳にはいかない。
この大きな空白の理由を解き明かし、ハラル化粧品市場を攻略するアイデアをこのコラムで提供してみたい。

(※1)ハラル化粧品とは、政府の認証機関に「ハラル」であると認証され、パッケージにハラルマークが明記されている化粧品のこと。
(※2)ハラル認証とは、政府認証機関によって、原材料、製造工程、品質等が審査され、イスラム法に適合する製品であると認められること。認証された製品にのみ、ハラルマーク表示できる。


コンサルタント 安藤仁志

1960年、新潟市に生まれ、うお座。O型。大学卒業後、日本メナード化粧品に入社。主に海外事業に携わる。タイ、中国、マレーシアに駐在した経験は、現地法人の立ち上げから経営、現地法規制へのコンプライアンス業務、海外代理店の開拓・営業、海外マーケティングまで幅広い。退社後は、海外への進出を希望する企業へのコンサル業を営む。

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