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【ブラジルコラム】大きく成長した日本食市場(酒井 芳彦)

 「さあ行こう一家をあげて南米へ」の移住開始から今年で早105年の移住歴史をたどるブラジル。移住第1船・笠戸丸で158家族、781人の移住から始まり戦後の技術移住者を入れると総勢25万人(公式13万人)となり、今や4、5世の日系人が誕生する日系社会は大きい。100年に亘る日系人の功績も大で、Japonese Garantido(信頼される日本人)と評価は高く、過去の移住者の功労が親日国家を形成していると言っても過言でない。  

 ブラジルは移民国家であるものの当時日本食が無く、日本食の生産は日系移民が郷愁と社会貢献のサービス精神で始めたのがきっかけである。1934年三菱・岩崎家が操業を開始した東山農場では、味噌、醤油、清酒など発酵製品を製造・発売開始、又 中矢氏経営の「さくら醤油」、福原氏創業の「ヒノモト醤油」、Agro Nippo社の豆腐、納豆など今日でも日系人に親しまれマーケットシェアは高い。一方日本からの投資で古くは味の素株式会社であり、1956年会社を設立。日本からうま味の「味の素」製品を輸入開始し、今や約1,000億円の売り上げ規模に成長。又世界的に展開しているヤクルト社も1960年代に進出し、第二工場を最近完工、ブラジル事業は大変成功している。

 資源(食材)に豊富なブラジルでは、国産品で充分生活出来る環境にあるが、国の安定と外貨準備高が堅調に推移し輸入の自由化により、最近では日本、韓国、中国、米国などから種々の日本食の食材、清酒などが輸入販売されている。2011年の福島原発事故で、一時東京都を含む8県の産品は輸入禁止の措置であったが、昨年12月ANVISA(衛生監督庁・厚生省)は福島県産品を除き全て輸入禁止を解除した。寿司ブーム、和食ブームの中、海苔、醤油、緑茶、わさび、清酒など沢山の日本食加工食品が店の棚に並んでいる。また外食産業が好調であるので、ケータリング向け需要も高い。

 これら製品の輸入は、日系人、台湾、韓国、中国人が行っているが代表的な輸入業者は、ZENDAI、丸海、ヤマト商事、Tradbras,Midori Industria de Cha Ltda、Casa Buenoなどであり、主にリベルダージ(東洋人街)の小売店、スーパーなどで売られているが、その他大手量販店、スーパーなど全国的に日本食の食材は幅広く売られている。

 食品分野におけるビジネスチャンスは、現地日系企業を含めそれ以外の食品会社との技術支援、資本提携、経営支援、OEMなど資金力のアップ、ブランド・製品(品質)の差別化を図る一方、流通関係(システム、倉庫、物流など)の投資機会も大きいと考える。また外貨規制が無い状況であるので、他社に負けない美味しくて、魅力のある日本食材の売り込みを図り、貿易を拡大するチャンスでもある。


sakai.pngのサムネイル画像LAPITA専任アドバイザー
酒井 芳彦
(前 味の素株式会社中南米本部長・理事)

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