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【マレーシアコラム】ハラル化粧品のビジネスチャンス その2

ハラル化粧品市場の大きな空白 その2

前回のコラムでは、ハラル化粧品市場(※1)には空白があると言った。
今回は、この空白について掘り下げてみようと思う。

この空白に気づくためにはまず、化粧品における「ハラル」と「ノンハラル」の実情を理解する必要がある。

現在のマレーシアの化粧品市場には、「ハラルのもの」「ノンハラルのもの」の他に、実はもう一つある。「ハラル」でも「ノンハラル」でもない、第三のカテゴリー、「グレーゾーンのハラル」だ。

今、ハラルと言える化粧品は政府機関がハラル認証(※2)したものだけである。それ以外は、ノンハラルだ。ということになればいいのだが、面白いことに、そうとも言えない。

ノンハラル、つまりハラル認証を受けていないものでも非公式に「ハラル」とされることがある。これをグレーゾーンのハラルと名付けよう。

それでは、このグレーゾーンのハラルとは、どんなものなのか。

例えば、クアラルンプール市内の百貨店の、とあるブランドの化粧品カウンターで、販売員に、おたくの商品はハラルか、と聞いてみる。すると笑顔が素敵な彼女はこう答える。「はい、豚由来の原料は一切使用しておりません。ご安心ください。」と。これは事実である。

「ハラルマークはございませんが、動物性の原料は配合していません」とか「豚のコラーゲンではなく、フィッシュコラーゲンです」というような説明をしてくれると、ハラルマークがなくても、ハラルであると納得して、モスリム(※3)の客は購入していく。

このように「ハラルという認証はないが、成分上、ハラルだと消費者自身が納得したもの」が、私が呼ぶところのグレーゾーンのハラルである。

そもそも、女性が化粧品を買うとき、化粧品を使いたいという欲求から始まる。
モスリムの女性でも同様で、例えば、広告をみて、また人から聞いて、あるいは化粧品売場を通りかかって、その化粧品を使ってみたいという思うことがきっかけになる。肌の悩み、自分の嗜好によって、使いたい化粧品を選ぶのだ。

もちろん、ハラルでなければならないが、そこに個人差はある。
まずもってハラルマークがあるもの以外は使わないと決めている消費者もいれば、まずは品質、そしてその化粧品にハラルマークがなくても、ハラルだということを確認できれば使ってもよいと考える消費者もいる。ハラルマークはないが、購入する本人がハラルと判断できる。グレーゾーンが存在するのだ。

もしかしたら、モスリムでも化粧品がハラルであるかどうかはあまり気にしていないのではないか、とも考えた。だが、どうも違うようだ。
化粧品に関わるインターネットの掲示板には、様々なブランドの化粧品について、ハラルであるかどうかを話題にしたスレッドがたくさん出てくる。ハラルであることはやっぱり重要なのだ。

よりよい化粧品を使いたい。効果が期待できそうなものを使いたい。これはどこの国の女性でも同じだろう。
こういう消費者が、公式にハラルと認証されたものではなく、グレーゾーンハラルの化粧品を使っているというすっきりしない状態が、私にはチャンスに思えてならない。

大手ブランドと匹敵するような品質や効果を持ち、そしてそれがハラルマークを有し、心も肌も安心して使えるものがあればいいのに、ない。
これが私のいうハラル化粧品市場の空白である。

次回はこの空白の攻略に取り掛かるにあたり、ハラル認証について、考えてみる。

※第一回目のコラムはこちらから:【マレーシアコラム】ハラル化粧品のビジネスチャンス その1

(※1)ハラル化粧品とは、政府の認証機関に「ハラル」であると認証され、パッケージにハラルマークが明記されている化粧品のこと。
(※2) ハラル認証とは、政府認証機関によって、原材料、製造工程、品質等が審査され、イスラム法に適合する製品であると認められること。認証された製品にのみ、ハラルマークを表示できる。
(※3) イスラム教徒のこと。


コンサルタント 安藤仁志

1960年、新潟市に生まれ、うお座。O型。大学卒業後、日本メナード化粧品に入社。主に海外事業に携わる。タイ、中国、マレーシアに駐在した経験は、現地法人の立ち上げから経営、現地法規制へのコンプライアンス業務、海外代理店の開拓・営業、海外マーケティングまで幅広い。退社後は、海外への進出を希望する企業へのコンサル業を営む。

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