300年近く昔に、京都で木目込人形は誕生した
木目込人形が生まれたと言われているのは1740年ごろ。京都の上賀茂神社で仕えていた高橋忠重という人が、奉納箱を作った残りの木片で人形を作ったのが始まりとされています。その後、京都で生まれた木目込人形が江戸に渡り、江戸木目込人形が誕生しました。
当初は木を削って作られていた江戸木目込人形は、大正時代の終わり頃から「桐塑(とうそ)」という、桐のおがくずと生麩糊(しょうふのり)を混ぜて粘土状にしたものを使うようになりました。
顔・着物・帯のデザインは自分の好きなものを選べる
塚田工房での体験は、講師から江戸木目込人形の歴史と使う材料の話を聞くことから始まります。説明を受けて体験への期待が高まったところで、自分が製作する人形の顔と衣裳を選びます。
用意されている顔は、歌舞伎で目元を紅く彩る「目張り」があるものとないものの2種類。衣裳は、たくさんの布の中から着物と帯に使うものを1つずつ選べます。
1ミリ単位での木目込体験に思わず没頭
製作するデザインが決まったら、さっそく布を木目込ます。人形の溝に竹串でボンドを塗り、木目込ヘラで布を押し込んでいきます。押し込んだ布は一度剥がし、ボンドが付いた部分の1ミリ外側をハサミで切って、人形の溝に合わせたサイズに調整。この工程を着物と帯それぞれで繰り返していきます。
この時に意識するといいのが、布の柄。実際に木目込んだ後、どの柄が表に出るのかを考えながら溝に合わせていくと、より綺麗な仕上がりになります。
着物と帯を木目込むことができたら、講師が作ってくれる帯の結び目を取り付けます。そして、頭も取り付けて江戸木目込人形が完成です。
人形と合わせるのは、宮内庁へ納入実績のある由緒正しき畳
本来はすべて布で覆われる木目込人形ですが、この体験ではあえて底の部分を残し、桐塑が見えるようになっています。これは、木目込人形の伝統的な素材を持ち帰った後も目にできるようにとのこと。工房からの嬉しい心遣いです。
体験の最後には、人形を乗せる畳を複数のヘリのデザインの中から選びます。完成した人形に合うものを選びましょう。この畳は、平成と令和の大嘗祭(だいじょうさい)で採用された畳屋で作られたもの。大嘗祭とは、天皇が即位した年に行われる特別な儀式です。その畳に自分で作った江戸木目込人形を乗せると、上品な雰囲気が醸し出されます。
自宅に持ち帰った後も、鮮明に記憶に残る体験を
世界中には数多くの人形がありますが、胴体に直接布を木目込む種類は他にありません。唯一無二の技法が使われている江戸木目込人形は、市場が縮小傾向にあります。そこで塚田工房では、多くの人の手に取ってもらえるように、雛人形だけでなく力士や妖怪などさまざまな種類の人形を製作しています。
見ても楽しい江戸木目込人形ですが、この体験を通じて、作る楽しさと素材の奥深さを知ることができます。ぜひ日本の伝統的な技術を体験し、江戸木目込人形という形で、この日の思い出を残してみてはいかがでしょうか。
塚田工房は天保12年(1842年)より代々続く江戸木目込人形の工房。現在は6代目の塚田詠春と7代目の塚田真弘によって日々製作が行われている。雛人形を中心に招き猫やフクロウ、干支など一点物の生地を使用した作品を数多く製作し、日本伝統工芸展では数々の入選を果たした。