伝統の職人技を受け継ぎながら、時代に対応し続ける江戸硝子
江戸時代、中国やヨーロッパから伝来したガラス製造の技術に日本の匠の技を掛け合わせて誕生した江戸硝子。幕末から明治維新にかけては、東京の地場産業として隆盛を極めました。墨田区錦糸町の大横川沿いにはガラス工場が軒を連ね、ガラス製品を製造。それを亀戸や江東、葛飾などの加工場で江戸切子として加工し、日本橋や上野などで販売していました。明治時代には舶来吹き(洋吹き)の手法が伝わり、電球や石油ランプの火屋(ほや)などのガラス製品が作られていきます。その後はガラス食器をはじめ、江戸時代からの職人の技術を受け継ぎながら時代が求めるプロダクトを生み出し続けています。
日本でしか作れない“和ガラス”として江戸硝子を展開
廣田硝子株式会社は、初代・廣田金太氏により1899(明治32)年に「廣田金太硝子店」として創設されました。戦後になると、復興とともに変わりゆく人々の暮らしに即した商品を次々と展開。ブランデーグラス型灰皿「BYRON」や、「元祖すり口醤油差し」、「デイジーシリーズ」などを販売し、人気を博しました。2000年以降は海外の展示会に参加したのを機に、日本でしか作れない和ガラスを世界に広めていこうと決意します。
大正時代に一世風靡したガラスの生産方法「乳白硝子」を復刻した製品「大正浪漫硝子シリーズ」は、骨灰という自然素材を使って「乳白硝子」をあぶり出す技法で作られたもの。現在は滅多に見ることのできないガラス製品だそうです。その希少性から、2012年に「すみだモダン認証商品」を受賞しました。150年以上の歴史を持つ江戸切子の技術を使った「蓋ちょこ」には、伝統文様と現代文様をデザイン。食器としてだけでなく、キャンドルホルダーや小物入れとしても使うことができます。廣田硝子が生み出す美しい江戸硝子は、日常に寄り添いながら暮らしをワンランクアップさせてくれます。
江戸硝子の廃材を再利用するリサイクルガラス作りに挑戦
体験では、まず選任のスタッフから江戸硝子や廣田硝子の歴史について簡単な説明があります。その後、リサイクルガラス作りに挑戦。廃材となった江戸硝子の端材を金槌でさらに細かく砕き、アクセサリーに適した大きさのガラス片を選り分けて、用紙の上に並べていきます。この時、白色のガラス片を先に並べ、その上に色の付いたガラス片を乗せることで、色が混ざり合った美しいリサイクルガラスを作ることができるそうです。
ガラス片を並べた後は電気窯に入れて高温で熱し、美しいガラス玉の完成です。体験では電気釜に入れる前までの工程を行います。
廃材となる江戸硝子は、江戸切子でカットされた部分や割れてしまったガラス製品などです。ガラスは扱いが難しく、リサイクルガラスを作ることは容易ではありませんが、廣田硝子ではリサイクルガラスの研究を重ねることで、丸いガラスの粒を作ることに成功。加えて2色のガラスを重ねて溶かすことで、マーブル玉のような緩やかに色の混じったガラス玉を作ることができました。こうしてできたガラス玉の美しさを活かすため、アクセサリー製品を新たに開発。廣田硝子が挑戦する江戸硝子のサステナブルな取り組みをぜひ体験してみましょう。
好みのリサイクルガラスを選んで作るオリジナルアクセサリー
次に、リサイクルガラスを使ったアクセサリー作りに挑戦です。まずはアクセサリーの土台をヘアピン(バレッタ、ヘアクリップ、アメピン)とネクタイピンの4種の中から1つ選びます。
選んだヘアピンまたはネクタイピンの土台に、好みの色や形のリサイクルガラスをのせていきます。すぐに接着せず、土台の上にリサイクルガラスを置いて完成品のイメージを固めるのがポイントです。イメージが決まったら、竹串を使ってレジン(接着用樹脂)をリサイクルガラスに塗布し、土台に付けていきます。すべてのガラスを土台に接着し終えれば、作品の完成です。
体験後は、工房に併設する江戸硝子の博物館へ移動。廣田硝子のスタッフが案内するガイドツアーで、江戸硝子の魅力をたっぷりと堪能することができます。江戸硝子作りを体験した後だからこそ、職人たちが作る匠の技が散りばめられた江戸硝子の魅力を一層感じることができるはずです。
日本独自の美しさが日常を特別なものに変える
江戸硝子は、西洋の技術を日本独自の美意識で昇華させた稀有な伝統工芸品です。繊細な職人技が織りなす独自のデザインは、日本人のみならず世界中の人々を魅了してやみません。廣田硝子株式会社の4代目社長である廣田達朗氏は、「日本で作るものだからこそ、日本の文化に沿ったものを作っていきたい」と話します。
江戸硝子で作るヘアピンは、日常使いはもちろん、式典などの華やかな場面でも目を引きます。ネクタイピンは、男性でも気軽に江戸硝子を身に着けられるアイテムです。日本独自の美しさが宿る江戸硝子を纏うことで、日常にさりげない特別感を取り入れてみてはいかがでしょうか。
1899(明治32)年に創業した、江戸硝子を製造・販売するメーカー。創業より社に伝わる貴重なデザイン資料をもとに、江戸切子や吹き硝子などを製作。脈々と受け継がれる伝統的製造を継承し、時代の変化に合わせながらインテリアに調和するプロダクトを作り続けている。