節句人形として発展してきた「木目込人形」
「木目込」とは、衣裳のひだや布切れの境となる部分に細い溝を彫り込み、その溝に布を「きめこむ」ことです。1740年頃、京都の上賀茂神社に仕えていた高橋忠重がお祭り道具の木端で人形を作り、その人形に神社の衣装を木目込んだことから「木目込人形」は誕生したと言われています。
その後、木目込人形は江戸にも流れ、型を作って量産できるようになりました。木目込人形は節句人形として発展し、今日まで受け継がれています。
木目込人形は作家性の強さが特徴
木目込人形の特徴は、伝統だけにとらわれず、新しい要素も取り入れながら発展してきたことです。そのため、独創的で作家性の強いものが多いのだとか。多くの伝統工芸品がデザイナーとコラボレーションする取り組みが当たり前のように行われている中、木目込人形はその先駆けとなる存在だと言えるでしょう。
柿沼人形では、節句の時期以外にも木目込人形を手にしてほしいとの思いから「招き猫」シリーズを展開し、多くの人の日常に木目込人形が溶け込むようになりました。
想像の世界が広がる生地選び
木目込トレイ制作体験では、黒い枠と桐の枠から好きな方を選ぶことから始まります。枠が決まったら、実際に木目込んでいく10本の生地を選びます。10種類すべてを異なる色や柄にしてしまうと、並べる順番を考えるのが意外と難しいのだそう。
欲張りすぎず、色の数を抑えた方が綺麗に見えることが多いそうです。色を並べる順番によっても雰囲気は変わるため、最初の工程から想像力を存分に掻き立てられる体験となるでしょう。
1枚ずつ丁寧に「木目込んで」いく
選んだ生地は職人が適当なサイズに切ってくれます。切ってくれた生地を1枚1枚モデラーという道具を使って板に押し込んで「木目込んで」いきます。
トレイは平らなので意外と難しさは感じませんが、固い生地を選ぶと木目込むのが難しいのだとか。しかし、固い生地は難しい分、完成したら豪華に見えるそうです。
お土産にはトレイと一緒に飾る人形も
木目込む作業を繰り返してトレイが埋まったら完成です。制作したトレイと一緒に飾る人形も、体験のお土産として選べるので、自宅のインテリアとして木目込人形の華やかさを感じてください。
「木目込む」時間は、自分の感性と向き合う時間
制作体験を実施する柿沼人形は、日本の侘び寂びを表現している木目込を知ってほしいのはもちろん、体験を通じて”自分の感性”も感じて欲しいのだそうです。
一つひとつの溝に木目込んでいく体験で、心地よい没入感を味わうことができるでしょう。
株式会社柿沼人形は、昭和25(1950年)に創業した江戸木目込人形の製造と販売を行う工房。創業当初は東京・荒川区に本社を構えていたが、事業拡大に伴い、昭和57年(1982年)に現在の埼玉県・越谷市に移転。二代目・柿沼東光は、独創的な人形づくりで数々の受賞歴を持つ。