地域で受け継がれる「多摩織」の技術を体験。
機織のリズムが誘う120年の歴史

多摩織

有限会社澤井織物工場

体験の概要

東京八王子市「有限会社澤井織物工場」にて、伝統的な高機(たかばた)という手織り機をつかって織物づくりを体験するプランです。創業から約120年受け継がれてきた織物技術が生み出す織物作りを楽しんでいただけます。

「多摩織」は、機織りが盛んな多摩地区で生まれた5つの品種の織物の総称。個性豊かな織物が育まれる環境に身を置きながら、手間暇をかけて一枚の織物を生み出す職人の技と、過去から未来へと繋がる伝統の重みを体験して下さい。

体験の特徴

日本でも珍しい多品種織物である「多摩織」の歴史を学んだ後、実際に織機を使った手織りを体験していただきます。細部への心配りが詰まった機織の工程を通じ、職人が一枚の織物に込める想いと受け継がれ続けてきた技術の理由を感じ取れるでしょう。

体験の詳細

時代のニーズを捉えながら120年の伝統を紡ぐ

「多摩織」は、現代に伝えられる伝統工芸品のひとつ。地域ごとに特徴のある品種が生まれるのが織物の特徴ですが、多摩地区はその傾向が特に顕著。1地区1品種が一般的な織物において、多摩地区は多様な織り方が今も独自に発展を続けることから、「お召織」「風通織」「紬織」「綟り織」「変り綴れ織」の5品種が伝統工芸品に認定されています。

有限会社澤井織物工場が誕生したのは今から約120年前。1900年頃、漢方医であった澤井家当主が養蚕業を営んだのが始まりです。やがて多摩地区の豊富な絹糸の産出量を生かした手織りをはじめ、明治から大正にかけて事業を拡大しました。

1995(平成7)年には広幅のシャトル織機を導入し、マフラーやストール、服地など幅広い需要に応えられる織物工場へと発展。有名ブランドからの受注に対応するだけでなく、技術提供を通じた大手IT企業の開発事業に寄与するなど、織物の枠を越えた活躍を見せています。

伝統的な織機と向き合いながら多摩織を体験

本プランでは、伝統的な多摩織の技術による手織りを体験していただきます。始まりは、4代目・澤井伸氏による多摩織の紹介から。桑茶で染められた美しい絹糸の束や、代々受け継がれてきた織物の見本帳に触れることで、多摩地区で織物が発展した理由を感じ取れるでしょう。

工房に移動した後は、いよいよ機織の体験です。まずは全長2.5mの木製の織機の前に座り、手足の位置を確認します。全身を使って糸を操る作業の壮大さに、思わず驚きの声が出てしまうかもしれません。

機織の工程は、大きく分けて3つ。上下に分けられた経糸の間に杼(ひ)を入れて緯糸を通し、足踏みをして上下の経糸を入れ替え、筬(おさ)を動かし緯糸を打ち込みます。バタン、トントン。バタン、トントン。はじめのうちはゆっくり通していた杼のスピードが上がり、足踏みと筬が織りなす音のリズムが心地よくなるころには、美しい布地が見えてきます。

紬織を楽しみ、さりげない東京のおしゃれを生み出す

体験で織る布の品種は、澤井織物工場が得意とする「紬織(つむぎおり)」です。紬織の特徴は、先染めした糸を織り上げることで生まれる素朴な風合いにあります。途中で緯糸を変え、柄に変化をつけるのも紬織の楽しみ方のひとつ。杼で通す緯糸の太さが変わるだけで、これまで刻んできたリズムが大きく変化します。3つの工程を乱さないためには、何よりも集中して糸と向き合うことが大切です。ひとつひとつの動作を大切にしながら、美しい織目が生まれる時間を楽しみましょう。

織り機に向き合うこと約30分。手足に少しの疲れを感じるころに、紬織の生地が完成します。わずかな光沢に込められた控えめな美しさは、さりげないおしゃれを大切にする東京の美意識の象徴といえます。お持ち帰りいただく織物を額に入れて飾る時には、機織りの音を思い出しながら、東京の美を生み出す職人の技と想いを振り返ってください。

忘れられない思い出とオンリーワンの作品を作ってほしい

澤井織物工場は、多摩織の伝統を受け継ぎながら、現代、そして未来へと繋がる織物の可能性を追求しています。そうした4代目・澤井伸氏の姿勢は高く評価され、令和6年度には東京都名誉都民の称号が贈られています。

「糸を通すときの戸惑いも、振り返れば忘れられない思い出のひとつ。体験を通じてオンリーワンの作品を作ってほしい」と話す澤井氏。織り機と向き合った真剣勝負の記憶は、きっと東京でしか味わえない、唯一無二の思い出になるはずです。

有限会社澤井織物工場 東京都八王子市高月町1181

1900年頃、八王子にて創業。多摩織の一品種である「紬織」を得意とし、4代に渡り手織りの技術を伝える。1995年頃から広幅シャトル織機を導入し、手織りならではの風合いと中量生産を両立する。先進的なデザインの採用や他業種との連携に積極的であり、有名ブランドとのコラボレーション大手IT企業への技術提供など、現代文化と伝統工芸の融合に意欲を見せる。

プラン詳細

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