江戸の人々の生活を照らす提灯
提灯は室町時代に中国から伝わり、人々の生活を照らし続ける照明器具として使われてきました。当時は竹で編まれた籠提灯が主流でしたが、時と共に生活様式にあった形へと変遷を続け、江戸時代には今も伝わる折りたたみ式の提灯になったといいます。
泪橋大嶋屋のルーツは浅草の地にあります。江戸時代から名を馳せていた本家「大嶋屋」からのれん分けを受けた初代・村田芳造が南千住の泪橋付近に店を構えたのが泪橋大嶋屋の始まりです。本家は残念ながら太平洋戦争の空襲により焼け落ちてしまいましたが、のれん分けを受けた10の大嶋屋がそれぞれ伝統を受け継いでいます。
現在の泪橋大嶋屋で技を磨くのは、東京マイスター受賞および荒川区登録無形文化財保持者認定を受けた3代目の修一氏と、その息子である4代目の健一郎氏。伝統的な提灯作りに留まらず、親子で現代の生活に溶け込む新たな提灯作りに挑戦し続けています。
伝統的な書体「籠文字」を提灯に書き込む手描き提灯作りを体験
本プランで体験できるのは、全高約25cmのミニ提灯への江戸文字の書き入れです。選べる提灯の形は、ふんわりとした球体の卵形と、スリムでスタイリッシュさを感じさせる細型の2種類。自宅に飾られた提灯の姿をイメージしながら、ライフスタイルに溶け込む灯りの形を選びましょう。
工程は、職人が提灯に書き入れた文字の下書きを黒塗料でなぞるところから始まります。
泪橋大嶋屋が受け継ぐ江戸手描提灯に用いられる文字は、江戸文字の中でも太く迫力を感じさせる「籠文字」。遠くからでも一目で分かる勢いのある字体からは、江戸の”粋”を感じられます。
文字を大胆に形作る時間はワクワクの気持ちと共に
事前に4代目・健一郎氏が薄く書き入れた下書きの上を筆でたどり、文字の輪郭を浮かび上がらせます。片手で提灯を支えながら線をなぞる作業は案外難しいものです。集中しすぎて呼吸するのを忘れないように。
黒塗料でなぞり終えると、白抜きの文字が描かれた提灯が姿を現します。色鮮やかな文字が浮かび上がる提灯をイメージしながら、輪郭線の内側を好みの色で塗り込みましょう。選べる色は10種類。今の気持ちにぴったりの色に文字が染まっていくに連れて、自然とワクワクとした気持ちが湧き上がってくるはずです。
柔らかな灯りを見るたびに東京の旅を思い出す
隅々まで塗り込み終わった塗料を乾かし、小さくたたんで折り目を付ければ江戸手描提灯の完成です。内側にLEDライトを灯せば、優しくも力強い文字が浮かび上がることでしょう。お土産は職人手描きの「東京」の赤提灯。いつかふたつの提灯を並べて飾るときには、ぜひ東京で柔らかな灯りに触れた時間を思い出してください。
1913(大正2)年に浅草・大嶋屋ののれん分けを受け、南千住にて創業。3代目・村田修一氏と4代目・健一郎氏の親子2代で伝統の技術を守り続ける。千社札にも用いられる江戸文字「籠文字」を大胆にあしらう「江戸手描提灯」は多くのファンに愛されており、神社・仏閣への奉納品や舞台道具に用いられている。近年はスマートフォンとの組み合わせを楽しめる現代風提灯「OTO CHOCHIN」を手掛けるなど、提灯文化の普及に尽力している。