外国人材受入れに関する北海道地域における情報交換会
2024年9月17日、北海道(札幌)において、北海道を拠点とする受入事業者、外国人材、登録支援機関、自治体の担当者などが一堂に会し、飲食料品製造業分野・外食業分野の特定技能外国人の定着や就労及び生活支援について、情報交換会が開かれました。北海道が実施する事業に関することから外国人材が働く職場での取組に関することまで、それぞれの立場から事例を紹介し、課題を共有しました。
- 会期
- 2024年9月17日(火) 14:00~16:00
- 場所
- TKPアーバンネット札幌ビルカンファレンスセンター
- 主旨
- 各分野における採用・定着に向けた各担当者からの「取組事例共有」と「課題感の洗い出し」
- 対象者
- 特定技能外国人受入事業者、特定技能外国人、登録支援機関、自治体、農林水産省
- 人数
- 約15名(受入れ事業者2社、特定技能外国人1名、登録支援機関2社、自治体4団体、農林水産省)
- 受入れ事業者属性
- 飲食料品製造業分野受入事業者/シリアル製造業 外食業分野受入事業者/回転寿司店経営
北海道に在留する外国人の現状と取組
北海道庁の担当者から、道内の在留外国人の現状について、コロナ禍で一時的に停滞したものの全体的に増加傾向にあること、技能実習生が25%、特定技能外国人が15%を占めていることなどが紹介され、その上で次のような具体的な事業を展開していることが示されました。
- ・雇用促進に向けた企業向け採用・定着セミナー、外国人留学生等と企業の合同面接会・座談会
- ・高度人材の確保を図るため、ベトナム、インドの教育機関とのネットワーク構築、マッチング交流会
- ・モデル企業への専門家派遣・日本語教育支援、好事例や課題の洗い出し
- ・ベトナム、インドネシア、ミャンマーに向けて、北海道の魅力をPRする動画を作成し配信
- ・15言語対応のワンストップ型相談窓口「北海道外国人相談センター」の開設
- ・外国人支援センターを設置し、災害時にも機能する多言語支援体制を構築
- ・3市3町で日本語学習支援者養成講座を開催
- ・外国人が企画から運営まで携わるイベントの実施
- ・監理団体を通じた技能実習生へのフィールド調査
【外国人材の受入れ拡大】
【働きやすい環境の整備】
【生活等の支援】
【地域での共生】
地方での採用と定着の課題
大都市圏から離れた地域では、採用と定着に対して、都市部以上に大きな課題感を持つ事業者が少なくありません。北海道の最低賃金は全国でも上位に入るものの、外国人材の中には、わずかな金額の違いで都市部への転職を決めてしまう人もいるといいます。外国人材を受入れる現場からは、
- ・「物価や生活費を考慮せず、10円20円の時給の違いで会社を選んでいることに驚いた」
- ・「友達の会社の方が給料がいい、と安易に転職する人もいる」
- ・「よく調べないまま首都圏に転職したが、その会社で十分なサポートが受けられず、結局北海道に戻ってきたというケースもある」
- ・「給与の総支給額だけを見て高い方を選ぶ傾向がある」
- ・「彼らには故郷でもない北海道に居続ける理由はないため、日本にいるうちに東京で働いてみたい気持ちも理解できる」
といった実情が共有されました。
東京と北海道内に店舗を持つ受入事業者では、「自然と街があって人が多すぎない」と札幌勤務を希望する外国人材が多いものの、札幌以外の道内の店舗を希望する人はやはり少なく、都市部とそれ以外の地域との差は、同じ北海道内でも生じているようです。
こうした課題に対して、
- ・「受入事業者や登録支援機関が情報提供をさらに手厚く行う必要がある」
- ・「北海道の働きやすさ、暮らしやすさを動画などで可視化して伝えてはどうか」
といった対策が提案されました。
また、「最近、現地での採用活動で応募者が減少している。大都市圏への外国人材の集中が今後も変わらなければ、北海道での採用は急速に難しくなるだろう。5年後はどうなっているか分からない」と危機感を募らせる声も上がりました。

マッチング・面接対策
採用においては、受入事業者と外国人材をいかにうまくマッチングさせるかも重要なポイントです。受入事業者から多くの求人があり、仕事を求める特定技能外国人も大勢いますが、お互いのニーズがマッチしなければ、採用には繋がりません。登録支援機関からは、「採用はやはり“点と点”。いくら求人が多くても、なかなか採用されない人も出てくる」と現状が共有されました。
マッチングがうまくいかず、採用が決まらない外国人材の中には、応募先の企業に対する理解が不十分なケースもあることから、
- ・「面接を受ける企業の求人票をしっかり確認してから質問するよう指導する」
- ・「業務内容だけでなく、働く場所、寮、休憩室などを動画で見てもらい、自分が働く姿をイメージした上で面接を受けてもらう」
といった事前準備の重要性があらためて指摘されました。
外国人コミュニティへの参加
特定技能外国人をはじめ、日本に在留する外国人にはさまざまなコミュニティがあり、そこでの繋がりが、外国人材の孤立化を防ぐ役割も果たしています。特にSNS上のコミュニティは影響力が大きく、生活情報の収集、安否確認、ネットワークづくりなどに有効なツールである反面、求人や転職に関して真偽不明の情報や詐欺が疑われる情報が散見されるという指摘があります。そのため、受入事業者や登録支援機関からは、
- ・「リアルのコミュニティを求める外国人材には、登録支援機関への相談を勧める」
- ・「大使館など公的機関が主催するイベントを活用して繋がりをつくる」
- ・「SNSにおいて日本では法律違反に当たる情報があることを具体例を挙げて伝える」
といった対応を取っていることが報告されました。
会の締めくくりに、農林水産省の担当者から「受入事業者や登録支援機関のみなさんが直面している問題を知るとても良い機会になった。うかがったお話を今後生かしていきたい」と、数多くの課題が共有されたことへの感謝を述べられ、情報交換会を終了しました。