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【セミナーレポート】第二回 ムスリム・インバウンド・セミナー & ワークショップ(札幌)簡易報告書

報告者:株式会社JTBコーポレートセールス  新宿第五事業部  グローバルビジネス推進課 石毛 照栄

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 イスラム教を主要な宗教とするマレーシア・インドネシアからの訪日外客数は2015年に50万人に達しています。直近2016年1月~5月(推定値含)においても、両国からの外客数は130%~140%と順調に延びており、特に1・2月の冬季期間には対前年度比平均50%と高い伸び率を示しています。出典:日本政府観光局 統計データ)
 雪や豊かな自然等多くの観光資源に恵まれ、2017年冬季アジア大会開催を控える札幌市は、今後さらに多くのムスリムの方々の訪問が期待されます。
 株式会社ジェイティービーは北海道経済産業局と共催にて2016年3月7日、ムスリム旅行者受入の基礎的知識向上を目的に第一回ムスリム・インバウンド・セミナー「訪日ムスリム旅行客の課題と受け入れ側に求める対応」テーマに実施しました。約180名の観光産業従事者が参加し、北海道におけるムスリム・インバウンドへの関心・期待の高さが明確になりました。
 そこで、第二回目は事業者に円滑に開発に取り組んでもらうことを目的に「ムスリム対応食事メニュー&お土産開発」に焦点を絞り、専門家より具体的な先行事例等について講演していただくだけではなく、事業者の課題解決に向けたワークショップも開催致しました。第二回目セミナー&ワークショップの概要を共有致します。

【開催概要】
日時: 2016年7月27日 水曜日 
   セミナー:10:00-12:00、ワークショップ:13:00-14:30
会場: 札幌グランドホテル東館3F 
   セミナー:GINZEN 、ワークショップ:月&雪
主催: 経済産業省北海道経済産業局
   株式会社ジェイティービー
対象: 観光産業従事者、120名 (実来場者数135名)
共催: 株式会社北海道二十一世紀総合研究所
企画: JTBムスリム・インバウンド・マーケティング・プロジェクトチーム*
*(株)ジェイティービー、(株)JTBコーポレートセールス、(株)JTB総合研究所
後援: 札幌市、札幌商工会議所
   帯広市、帯広商工会議所
   公益財団法人第8回札幌アジア冬季競技大会組織委員会
   独立行政法人日本貿易振興機構 北海道貿易情報センター
   株式会社北洋銀行             (順不同)



【セミナープログラム】10:00 - 12:00
第二回「ムスリム・インバウンド・セミナー」 ~ムスリム対応食事メニュー&お土産開発に向けて~
主催者挨拶:   経済産業省 北海道経済産業局長  児嶋 秀平
イントロダクション: ムスリム旅行者課題の再共有
     JTBムスリム・インバウンド・マーケティング・プロジェクト
     株式会社JTBコーポレートセールス 新宿第五事業部 グローバルビジネス推進課
     営業企画マネージャー 石毛 照栄     
講演1: ムスリムにも対応したお土産開発について
    特定非営利活動法人日本ハラール協会 理事 四辻 英明 氏
講演2: ムスリム対応食事メニュー開発と情報開示方法
    株式会社二宮 代表取締役社長 二宮 伸介 氏
講演3: ムスリムに向けた適切な情報発信方法について
    ハラールメディアジャパン株式会社 代表者取締役 守護 彰浩 氏


イントロダクション: ムスリム旅行者課題の再共有
  JTBムスリム・インバウンド・マーケティング・プロジェクト
  株式会社JTBコーポレートセールス 新宿第五事業部 グローバルビジネス推進課
  営業企画マネージャー 石毛 照栄 
・ JTB独自調査「ムスリム旅行者調査」の中でセミナーテーマに最も関連性が高い「食事&ショッピングにおける不安」を紹介。マレーシアムスリム、インドネシアムスリム共に5割以上が「お土産・化粧品の豚由来成分」「食事・飲料の豚&アルコール由来成分」「ハラームな肉」が不安と回答。
・ 国籍により特徴も見られ、マレーシアムスリムの5割以上は「肉加工品のハラール屠畜」「調理器具・食器」に対しても不安と感じ、インドネシアムスリムの5割以上は「化粧品のアルコール由来成分」についても不安と感じていた。
・ ムスリム旅行者の課題解決には製造業の協力が必要。幅広い観光産業における異種業間のネットワークによりムスリム対応食事メニュー・お土産開発を進めていただき、開発後は適切な情報開示・コミュニケーションと発信を。

講演1: ムスリムにも対応したお土産開発について
  特定非営利活動法人日本ハラール協会 理事 四辻 英明 氏
・ イスラームは1つであるが、消費者となるムスリムは居住エリア、食文化、趣向の違い、許容範囲等が異なる為、イスラミックマーケティングが重要である。
・ ハラール製造工程などはアレルゲン物質のコンタミネーションを防ぐアレルギー対応と酷似しており、決して日本の製造企業にとって難しいことではない。
・ ハラール製品・サービスは決してムスリム専用ではなく、安心・安全なものとしてほぼ全ての方々へ提供することができる。
・ とある地方では災害時の提供食について長期保存、アレルギー対応、高齢者用対応(柔らかい物)が課題となり、地元農産品である米粉というハラール原料を活用した米粉クッキーの開発・製造がされ、いまでは輸出も見込める商品となっている。つまりムスリムだけでなく、ムスリムにも対応しているという開発視点が重要。

講演2: ムスリム対応食事メニュー開発と情報開示方法
  株式会社二宮 代表取締役社長 二宮 伸介 氏
・ ハラール専用食品輸入・卸として宿泊施設・飲食店へ提供している主な調味料の紹介。和食はもちろんのこと、食の多様化により、洋食、中華、そして自国のエスニック料理も人気である。
・ ムスリム・フレンドリーとは「ムスリムにとって友好的である」という意味であり、決して「100%でないハラール」、「ハラール性を緩和させた」という意味ではない。
・ 各施設が提供できる範囲のサービスを正直に伝えることが重要。例えば国際機関の食事箇所のように「ハラールキッチンではないが、ハラールミート・調味料を使用している」など。この情報開示によりムスリム消費者が食事箇所を選択できる。
・ 施設マネジメント、シェフだけでなく、最終的にムスリム消費者と直接接点があるサービス提供(給仕)者へのムスリム対応の教育も必要である。

講演3: ムスリムに向けた適切な情報発信方法について
  ハラールメディアジャパン株式会社 代表者取締役 守護 彰浩 氏
・ ハラールかどうかはムスリムが判断する、したがって判断材料となる情報且つ、ムスリムが欲しい情報を英語で開示することが重要である。
・ ディバイスはモバイルタブレット、そして発信のツールとしてはインターネットのHPよりもFacebookやインスタグラムが特に効果的である。
・ ムスリム受け入れ施設で成功している例としては、通常メニューがムスリムも食せるように原料をハラールミートやハラール調味料へ変更し、常連の方もハラールミールと気づかないという点。
・ ムスリムおもてなし街づくりとして、異業種産業によるネットワーク構築が観光ビジネスの活性化となり、ムスリム旅行客の利便性に繋がる。



【ワークショッププログラム】13:00 - 14:30
「ムスリム・インバウンド・ワークショップ」 ~ムスリム対応食事メニュー&お土産開発に向けて~
■食事メニュー開発ワークショップ
  専門家: 株式会社二宮 代表取締役社長 二宮 伸介 氏 
  専門家: 株式会社株式会社北海道二十一世紀総合研究所 研究員 高澤 直之
■お土産開発ワークショップ
  専門家: 非営利活動法人日本ハラール協会 理事 四辻 英明 氏
  専門家: 株式会社とかち製菓 代表取締役 駒野 裕之 氏


【食事メニュー開発ワークショップ】 フリースタイルディスカッション方式:90分
ファシリテーター:株式会社北海道二十一世紀総合研究所 客員研究員 高澤 直之
【主なディスカッション内容】
・Non-Pork、 Non-alcohol、halal meat 以外の取組方について参加者との意見交換。食洗機、食器、倉庫など。
・ムスリムへ提供する料理の監修について。ムスリムの起用など。
・ムスリムの嗜好性について。
・提供する料理についての説明、情報開示やコミュニケーションの取り方について。
・サプライヤーが施設へ提供する際の証明書やエビデンスの程度。原材料表、製造工程表、宣誓書など。
・日本におけるハラールな物流の課題。
・料理メニューだけでなくスイーツ開発に関する課題。
・ハラール材料のコストについて。特に輸入肉(ビーフ、チキン)
・ムスリムを受け入れる為のインフラ整備への行政による支援とガイドライン。
・国内市場におけるハラール屠畜場と肉・加工品の販売について
・ハラール機内食の話題に関して様々な話題や一部矛盾を抱えながらも今後の取組みに関するスタンダードとして注目が集まった。

【お土産開発ワークショップ】 フリースタイルディスカッション方式:90分
ファシリテーター:株式会社JTBコーポレートセールス 新宿第五事業部 グローバルビジネス推進課
    営業企画マネージャー 石毛 照栄
【主なディスカッション内容】
・JAKIM認証を取得した大福の開発・製造過程について。特に開発の過程におけるムスリムの嗜好性や好みの触感など。
・試作品を作るにしても原料のハラール性をどこまでトレイスバックするか。ハラール認証(輸出市場)と訪日市場での違い。
・加工原料にハラール認証が無くてもメーカーによる宣誓書にて対応ができる可能性。
・日本国内でも加工原料メーカーがハラール性を担保、認証を取得している企業が増えている現状など。
・食べたことがない、見たことがない商品をムスリムへ紹介する際のアドバイス。
・情報開示の仕方。業務用として提供する側、それを使って完成品を製造する側。最終的にムスリムが手に取った際にどうあればいいのか。
・ハラール以外の相手国による参入障壁、関税など。
・ムスリムはハラール商品を欲しているが、日本の中小企業やOEMは安易に整備投資ができない現状について。
・ハラールマーケットは世界的に注目されているレッドオーシャンでもあるので戦い抜く商品の強み、日本・北海道ブランド戦略について。
・アルコールや豚由来成分を省くというレギュレーションも大事だが、先に考えるべきはターゲットとなるムスリムの顧客創造について。


JTBムスリム・インバウンド・マーケティング・プロジェクトチームとラピタは、インバウンドビジネスを目指す企業、自治体への支援を引き続き行ってまいります。

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