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【フィリピン】<マニラ・ウォーター、国に790億ペソの減収補償要求> 水道料金改定を巡る係争、再び国際仲裁裁判所に

 マニラ首都圏東半分を主な事業基盤とするアヤラ系の水道企業マニラ・ウォーター(MWC)は、適切な水道料金改定が認められないことによる収入損失790億ペソの補償を求め、シンガポールの国際商業会議所(ICC)国際仲裁裁判所に提訴を行った。補償要求先はフィリピン共和国である。

 この問題は、1997年のマニラ首都圏上下水道局(MWSS)の上下水道事業民営化に端を発する。この民営化において、首都圏の東半分の事業をマニラ・ウォーター(MWC)が、西半分の事業をマイニラッド・ウォーター(マイニラッド)が引き継いだ。

 MWCなどによると、1997年の民営化の際、フィリピン共和国は財務省を通じて、MWSSの債務を保証するとともに、MWSSによる規定外の料金引き下げ命令によって生ずる民間2社の損失を補償することを確約したとのことである。ところが、近年MWSSが規定外の料金値下げ命令を発出、その命令によるMWCの2015年から2037年(民営化契約満了時)の収入損失額は790億ペソに達すると試算される。

 MWCは今年4月23日にこの790億ペソの収入損失補償を財務省に要求したが、全く対応が見られないことから、このほど、国際仲裁裁判所に提訴を行った。MWCとMWSSとの間の事業合意書においては、両者が交渉などで解決できない問題に関しては、国際通商法に基づく国連委員会仲裁規則による仲裁手続きを行うと規定されている。

 なお、首都圏における水道料金改定問題で、MWCとマイニラッドという民間2社と、MWSSとの間で2年半に及ぶ対立が続いてきている。この対立は、2013年6月に首都圏の水道2社が水道料金値上げを申請したのに対し、MWSSは9月にその値上げ申請を却下しただけでなく、5年間に及ぶ値下げ命令を発出したことにともなうものである。

 MWCは、13年6月に、コスト増や設備投資拡大などを背景に値上げ申請を行ったが、MWSSはその値上げ申請を却下、逆に5年間で同7.24ペソ(29.47%)の値下げを命じたのである。この大きな相違を解決するために、既にMWCは国際仲裁裁判所に仲裁を依頼した。 国際仲裁裁判所は今年4月21日に、MWSSの29.47%値下げ命令に対し、11.05%の値下げが妥当との判断を下した。

 この際、MWCは上記のように、MWSSの規定外の値下げ命令は790億ペソの収入損失を生じさせるとして、その損失補償要求に至ったのである。マイニラッドも、同様な要求や提訴を行ってきている(15年12月11日のフィリピン証券取引所回覧06537-2015号などより)。

提供:WCLソリューションズ・フィリピン

ここで紹介できなかったフィリピン経済情報は、 フィリピン経済・金融・投資情報 にてご確認いただけます。

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