【フィリピン】<世銀、今年の比成長率予想を5.8%へと大幅下方修正>来年は6.4%、再来年は6.2%に、米利上げの影響軽微か
世界銀行は10月5日に発表した「東アジア・大洋州地域 半期経済報告」の中で、東アジア地域が引き続き世界の経済成長の一番の原動力として世界全体の成長の5分の2近くを占めている、と指摘している。2015年の同地域全体の成長率は、2014年の6.8%をやや下回る6.5%になると見込まれる。
同報告書は「東アジア・大洋州地域の途上国ではなおも堅調な成長が続くが、緩やかな鈍化傾向にあるため、域内各国の政策担当者には、持続可能かつ長期的な包摂的成長の基盤となる構造改革に引き続き注力する事が求められる。具体的には、金融、労働市場、商品市場における規制改善や、透明性と説明責任の強化に向けた措置などの改革である。こうした政策は、投資家と市場に安心感を与え、人々を貧困から脱却させることのできる成長の持続に役立つだろう」と指摘している。
そして、「東アジア途上国の成長は、中国経済のリバランスや、予想される米国の量的緩和政策打ち切りのペースなどにより、減速する事が予測される。こうした要因は、短期的には金融ボラティリティを引き起こしかねないものの、長期的には持続可能な成長のために必要な調整と言える」とも説明している。
国別に見ると、その状況には大きなばらつきがある。中国のGDP成長率は、2014年実績の7.3%から、15年は6.9%、16年6.7%、17年6.5%へと緩やかに鈍化すると予想されている。そして、国内消費・サービス型モデルへと経済がシフトする。
、中国経済が緩やかな減速に留まる予想する理由は、中国はより大きな減速の危険に直面しても、政策面で十分な余裕をもっている他、比較的低い公的債務水準、銀行システム外での預金制限、金融システムに果たす国家の支配的役割といったリスク対応ツールを備えていることである。しかし、中国の成長がこの想定以上に下振れすれば、貿易や投資、観光を通じて中国と繋がりのある国々を中心に、域内各国でその影響が実感される事になるだろうとも指摘している。
中国を除いた東アジア途上国のGDP成長率は、214年実績の4.6%から、15年も4.6%、16年は4.9%、17年は5.1%と拡大すると予想されている。インドネシア、マレーシア、モンゴルなどの一次産品輸出国は今年、世界的な一次産品価格低迷を受け、成長減速と歳入低下となる。一方、一次産品輸入国は今後も、安定的かつ大幅なペースで成長すると見られている。例えばベトナムは、15年に6.2%、16年と17年はは6.3%の伸びが見込まれている。カンボジアでは、農産生産高減少が経済に悪影響を及ぼすが、15年、16年、17年ともに6.9%の成長と塗装されている。ミャンマーでは、7月の大洪水により、成長ペースが14年の8.5%から15年は6.5%に減速するが、16年は7.8%、17年は8.5%へと再加速すると予想されている。他方、太平洋島嶼国は穏やかに成長と見込まれている。
ASEAN全体の成長率は14年実績の4.4%から15年は4.3%へと減速するが、16年は4.7%、17年は4.9%へと拡大すると予想されている。
フィリピンに関しては、14年実績6.1%に対し、15年は5.8%、16年は6.4%、16年は6.2%と予想されている。これまでの予想にくらべ、15年が0.7%ポイントの大幅下方修正、16年と17年がともに0.1%ポイントの小幅下方修正となっている。
世界銀行は、米国金利の緩やかな引き上げが今後数カ月以内に始まると見ている。ただし、この利上げは既に予測されており、秩序だって実行されると見ている。それでも、こうした引締めに市場が大きく反応し、通貨価値の下落、債券のスプレッド拡大、資本フロー減少、流動性の逼迫を引き起こすリスクは残るとしている。
逆風となるこうした要因の可能性を踏まえ、世界銀行は、域内全体にとっての2つの重要な優先課題を強調している。一つ目は、対外的・財政的な脆弱性に対処するための慎重なマクロ経済運営、二つ目は、民間投資の奨励に主眼を置いた構造改革のさらなる深化である(15年10月5日の世界銀行うあ世界銀行東京事務所発表などより)。
提供:WCLソリューションズ・フィリピン
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