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【ロシアコラム】ロシア代理店との協業について

日本の中小企業がロシア市場でビジネスを展開する際は、ロシア企業を代理店として起用することをお勧めする。
ロシアに限らず、日本企業が海外でビジネスを展開するには対象国の経済、文化、社会などを理解することが重要である。これらが分からないとモノを売るための正確なマーケティング(商品企画、販路政策、販促活動など)に支障をきたすこととなる。さらに、ロシアは国土が広大で全地域を自社だけでカバーするには無理がある。このような本質的な課題を上手く解決する方法が「ロシア代理店との協業」である。
本コラムではロシア代理店との効果的な協業の在り方について述べてみたい。

【協業形態について】

 Exclusive/Non-exclusive Distributor(独占販売/非独占販売代理店)の選択が最初の課題となろう。
 独占販売代理店とは特定のロシア代理店だけに自社製品の販売権を付与する形態で、他のロシア代理店には自由に販売できない。本形態のメリットは相互の信頼関係が強化されること、デメリットは販売不振の際でも販路を拡大できないこと。ロシア代理店候補の中には独占販売権を求める企業もあるが、まずは数年か少なくとも1年は非独占販売代理店とし、様子を見ることをお勧めしたい。

【販売対象地域について】

例えば、モスクワ市内のみに限定するのか、モスクワを含む中央連邦管区とするのか、或はウラル山脈以西の地域と規定するのか、慎重な検討が必要である。検討材料としては、ロシア代理店の販売ネットワークや人的リソースなどが挙げられる。最も理想的な代理店はロシア各地に販売拠点を有する企業。最大のメリットは物量がまとまりやすいこと、ビジネス情報の共有化が容易であること、が挙げられる。

【ロシア市場での販売価格設定について】

ロシア企業を販売代理店と位置付ける場合、日本企業は同代理店の販売価格設定に関し異議申し立ては出来ないし強制力もない。また、取引停止などの措置をとれば独禁法違反の疑義が生じるので要注意。但し、日本企業はロシア代理店に対して"suggested retail price(参考価格)"を提示することは可能である。例えば、日本市場や他の海外市場での実売価格などをアドバイスし、ロシアでの適切な市場価格設定の参考にしてもらう方法である。もし、どうしても日本企業が市場価格設定権を有したい場合は、代理店契約ではなく、商談は自社で行いロシア企業には物流などを委託する「限定ビジネス協力契約」やコミッションベースの「エージェント契約」などとすべきであろう。

【ロシア代理店の育成について】

ロシア企業と代理店契約を締結すれば自動的にモノが売れるわけではない。日本企業の期待どおりにロシア代理店を動かすにはかなりの努力が求められる。例えば、以下のアクションが求められよう:

1) 定期的訪問と同行営業の実施
 当初1年間は数か月に1度は代理店を訪問し同行営業の実施を行いたい。これにより、意思疎通の強化、信頼の醸成、相互理解が深まるものと思われる。

2)販売企画における相互理解
 アプローチすべき顧客(顧客戦略)、競合製品との優位性(差別化戦略)、宣伝・広告に関する認識(販促戦略)など、販売に必要な考え方を相互理解すること。
 一般的にロシア中小企業は体系だった販売戦略には無頓着ゆえ、時間をかけてその効果を知らしめることが必要である。

3) 販売管理における相互理解
 ここではsales forecast(販売予測)について述べたい。ロシア代理店は短納期を求める一方、日本企業が製造計画に必要とする販売予測を立案する習慣がない。ロシア風思考ともいうべきか、「先のことは誰にも分からない」といった具合である。このような製造や在庫管理に必要な手法を理解させるには時間がかかるが、成功事例を見せることにより、理解が深まるものと思う。要忍耐!

4) Certificate of Partnership(パートナーシップ証明書)の授与
 独占販売権は与えないが、より緊密な関係構築を目的としてロシア代理店に同証明書を授与することをお勧めしたい。同証明書により顧客に対し、ロシア代理店が日本企業との正式なビジネス関係にあることをアピールできることがメリットである。
主な記載内容は対象商品、販売地域、同証明書の有効期間、そして日本企業名と責任者の署名である。

LAPITA会員企業の皆様が相性の合うロシア代理店を発掘され、同代理店との協業を通じ円滑なロシアビジネスを推進されることを願ってやまない。

ロシアビジネスコンサルタント 鐵尾 安夫 

 日魯漁業にて旧ソ連からの農水産物輸入を行うとともに鮭鱒母船操業通訳官を担当。
 ソニーでは旧ソ連向け放送機器システム輸出および同機器デファクト化の推進を行うとともにシェワルナゼ外務大臣(当時)のソニー訪問をアレンジするなど、ソニーと旧ソ連のブリッジ役として活躍。
2007年よりロシアビジネスコンサルタント業務を行うテツオ・トレーディング株式会社を設立し、中堅・中小企業のロシアビジネス支援をはじめ、2008年よりロシアNIS貿易会のビジネスマッチング事業コンサルタント、2009年より外務省主催の「在ロシア日本センター訪日研修事業プログラム」の一環としてロシア経営者幹部を対象としたビジネスセミナー講師を担当。

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