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【ロシアコラム】中小企業のロシアビジネス参入について

今回は長年に亘り旧ソ連時代からロシアビジネスに携わってきた経験をもとに、中小企業のロシアビジネスへの参入について私見を述べてみたい。

【最初の壁】ロシアのイメージについて

ビジネスマッチング・コンサルタントとして、中小企業の方々とロシアでの商談に参加すると、帰国後に企業の訪ロ者から次のような感想を聞くことがある:

■ロシアは日本の常識があまり通じないのでは、と心配していた。
■しかし、実際の商談はビジネスライク且つロジカルな対応で好感が持てた。    
■訪ロ前に持っていた負のイメージが訪ロ後には大きく好転した。               
  
このように、ロシアビジネスへの「最初の壁」がロシアに対するマイナスイメージである。
紙誌や伝聞から形成されたこのようなイメージを払拭するには、ロシアを自分の目と足で確認することが最も早くて確実な手段と思われる。
ロシアには『7回聞くより、1回見た方がよい』という諺がある。「百聞は一見にしかず」という日本の諺と同じ意味である。

【第2の壁】ロシア企業の発掘について

ロシアへの負のイメージが払拭できた後、待ち構える第2の壁は、いかに信頼できるロシア企業を発掘するか、ということである。この壁を突破できればロシアビジネス成功に大きく近づいたものと言える。私が実践しているロシア企業発掘方法は以下のとおりである:

■日露双方の人脈を通じて企業の紹介を得ること。
■ロシアのインターネットによる企業情報の収集を行うこと。
■出来るだけ多くのロシア企業と現地で商談を実施し、ビジネス条件は勿論のこと、相性の良し悪しを確認すること。

「相性」は非常に情緒的なもので数値化することも叶わず、デジタル社会の昨今ではあまり好まれないものかも知れない。しかし「相性」の良し悪しにビジネスや人間関係が大きく左右されることは否定できないだろう。多くのロシア企業と商談を行い、自社と相性の合う企業を見出すことがロシアビジネス成功の鍵であると言っても過言ではない。時間の許す
限り、多くのロシア企業と会うことをお勧めする。

【第3の壁】ロシア企業とのコミュニケーションについて

相性の良い信頼できるロシア企業の発掘後、直面する実務的な問題が同企業とのコミュニケ―ションである。これが上手く機能すれば双方の正確且つ迅速な意思疎通が図れ、円滑なビジネス推進が可能となる。標準的なコミュニケーション方法は以下のとおり:

■言語はロシア語が基本だが、英語が通じる企業もある。
■通信手段はEmailと電話が主体である。
■現地商談時には必要に応じて現地通訳の雇用が可能である。

自社にロシア語が出来る人材を確保できれば良いが、少なくとも英語ができる人材は必要となろう。さらにある程度の貿易実務を理解する要員も望まれる。万一、このような人材が確保できない場合は商社やコンサルタントに依頼する方法もある。

【第4の壁】自社及び製品のプレゼンテーションについて

ロシア語や英語によるコミュニケーションは外部に依頼することも可能だが、自社と製品のプレゼンテーションだけは自らの力で実施せねばならない。主なプレゼンテーションの内容は以下のとおり:

■会社概要(特に、海外ビジネス実績、海外拠点の情報など)
■製品説明(特に、用途と特長、競合他社との比較及び優位点など)
■商業条件(価格、納期、支払条件、船積み条件など)

現地での商談では以上をプレゼンテーションすることになる。特に、製品説明は正確な理解のためロシア語への翻訳が望まれる。ロシア企業担当者は日本の商談相手をつぶさに観察しており、相手の知識や度量を推し測っている。これらを意識し、プレゼンテーション資料準備には時間をかけて自信をもって臨めるようにしたい。また、ロシア企業はさまざまな質問をすることが多く、予めQ&Aを準備しておくことをお勧めする。ロシア企業は会社のネームバリューも大事にするが、それ以上に交渉相手の力量に注目する傾向にある。

以上、「中小企業のロシアビジネス成功の鍵」について述べてきたが、まだまだ多くの壁が立ちはだかることと思う。自社だけでロシアビジネス推進が困難な場合は、商社やコンサルタントに相談することも一案と思われる。

ロシアには「狼が怖ければ、森へは行くな」という諺がある。日本の「虎穴に入らずんば虎児を得ず」という諺に相当する。
LAPITA事業を通じて中小企業の皆様のロシアビジネス参入へのお手伝いができることを楽しみにしている。



LAPITAアドバイザー

ロシアビジネスコンサルタント
鐵尾 安夫 

日魯漁業にて旧ソ連からの農水産物輸入を行うとともに鮭鱒母船操業通訳官を担当。
ソニーでは旧ソ連向け放送機器システム輸出および同機器デファクト化の推進を行うとともにシェワルナゼ外務大臣(当時)のソニー訪問をアレンジするなど、ソニーと旧ソ連のブリッジ役として活躍。
2007年よりロシアビジネスコンサルタント業務を行うテツオ・トレーディング株式会社を設立し、中堅・中小企業のロシアビジネス支援をはじめ、2008年よりロシアNIS貿易会のビジネスマッチング事業コンサルタント、2009年より外務省主催の「在ロシア日本センター訪日研修事業プログラム」の一環としてロシア経営者幹部を対象としたビジネスセミナー講師を担当。

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