日本企業グローバルビジネスサポートLAPITA(JTB)

  1. TOP
  2. レポート・コラム
  3. ASEAN
  4. 【マレーシアコラム】ハラル化粧品のビジネスチャンス その4

【マレーシアコラム】ハラル化粧品のビジネスチャンス その4

【ハラル市場へ その2】

前回のコラムでは、日本企業が海外でハラル化粧品を販売する場合に必要なことを考えてみた。
今回はより具体的に考えてみよう。舞台は、日本企業が最も進出しやすいイスラム国の一つ、マレーシアだ。

(1)日本で製造し、ハラル認証を取得するというオプション

前回のコラムでも述べているが日本にいながらにしてマレーシアの認証機関によるハラル認証を取得することができる。日本にもハラル認証機関はあるが、マレーシアの機関に認証してもらうほうがマレーシア市場での訴求力は高くなる。

一概にマレーシアのハラル認証機関と言っても、複数あるのだが、ここはマレーシア政府直轄のJAKIM(ジャキム)にお願いしよう。この JAKIMは、積極的に国外からの申請者も受け入れている。
JAKIMに、日本で製造する自社製品をハラル認証してもらうということは、その工場がハラルだということと、ほぼイコールになるが、どのような手順になるだろうか。

申請書類を提出し、ハラルの要件を満たしているかという調査をするためにJAKIMから担当官が来日する。この実地調査後に審査を行い、審査に通れば、ハラル認証を取得。自社製品を「ハラル化粧品」として出荷できる。

ざっと書くと、いかにも簡単そうに思えるが、事前調査から、申請書類の提出のためのマレーシアへの出張費、実地調査のための担当官の出張費など、渡航費だけでも費用がかさむ上に、場合によっては通訳がいるだろうし、もしかして弁護士などの相談費用がかかるかもしれない。
そして、こういった申請というのは思ったよりも時間がかかるもので、そもそもハラル認証に必要な資料を準備するだけでも膨大作業量なので、海外の認証機関に申請するとなると、中途半端な気持ちではハラル認証取得にとりかかることはできない。

また、「その工場がハラルだということと、ほぼイコールになる」と前述したが、ハラル製品を生産することは、原則として、同じ工場ではノンハラルの製品は製造できないということになる。もしくは、ノンハラル製品の製造にかなりの制約をうけることになることも念頭にいれておいていただきたい。

(2)思い切って、マレーシアに工場というオプション

マレーシアに製造及び販売の拠点を得るには、当然資金がかかる。
ただし事業として真剣に考えるならば、そして長期的な視野に立つならば、こちらの選択肢の方が賢明だろう。

方法は3つある。
①合弁会社を設立する。
②マレーシアのハラル化粧品メーカーを買収する。
③マレーシアに100%出資の新会社を設立する。

私のおすすめは、①合弁会社を設立することだ。ただし、すでに実積のあるハラル化粧品メーカーとの合弁が望ましい。なぜなら、地元マレーシア及び海外にすでに販路があること、そして、ハラル市場を熟知しているパートナーを得るためことができるからだ。

これが②のマレーシアのハラル化粧品メーカーの買収では、こちらが主導しなければならず、なかなか知恵を出してくれない。過去のノウハウも急にさびついてしまうことが多い。
③のマレーシアに100%出資の新会社を設立するでは、自社なのだから、当然製造も、販路開拓も一からすべてをやらなくてはならず、長期的な採算を考えないとやれない。

その点、合弁会社だと、パートナーのやる気や知恵、これまでのノウハウを十分に活用できる。
彼らの経験を十分に理解しながら、市場のニーズを読み取り、日本の技術を駆使して、両方のいいところを兼ね備えたハイブリッドなハラル化粧品がで きあがる。これこそが、日本企業が求められている「ハラル化粧品市場への参入」だろう。

(3)日本のメーカーが海外で求められていること

日本の化粧品メーカーは世界中で評価されている。どこが評価されているのか?

まず、最先端の化粧品製造技術。加えて、品質管理、安全性の管理のノウハウ。
大量に、納期通りに、不良品がほとんどなく、高品質のものができる。 この、日本では当たり前のことが、海外の企業にはなかなかできない。

そして、ここで重要なのは、この評価が、驚くほど世界に浸透していることだ。日本製はよいもの。世界中どの市場にいっても、これは無条件に信じられている。この無条件に信頼されているという事実は、じつは、非常に希有なことである。
この類い稀なる信用は、何を意味するのだろうか。簡単に言ってしまえば、高価格の商品を売れるということだ。

価格が高いのに、消費者が購入するのはなぜだろう。費用対効果があると考えるからだろう。品質(効果)に信用がないと、高価格商品は売れない。

マレーシアのメーカーが製造するハラル化粧品は、低価格帯の化粧品ばかりだ。だからこそ、自国でも、輸出先の国々でも、海外メーカーのノンハラル化粧品に市場を奪われている。 自分たちのノウハウや経験を生かしながら、信頼のある高価格商品を発売し、世界中で「メイドインマレーシア」の知名度を上げること。これは、マ レーシア政府の悲願でもある。

いま日本に求められているのは「よいものをいかに作るか」というノウハウをマレーシアに提供することである。代わりに我々は、ハラル市場という未知の市場への切符を手に入れることができるのだ。

ビジネスはWIN-WINでなければ、長く継続させることはできない。海外パートナーとの良好な関係の構築と維持が新市場参入のカギになる。

第二回マレーシア・ハラルマーケット・ビジネスマッチングの詳細はこちらから【現地商談会】~ハラル事情視察~マレーシアミッション ビジネスマッチング・コース ―政府機関対談、工場視察、小売視察、商談会―

※前回のコラムはこちらから:【マレーシアコラム】ハラル化粧品のビジネスチャンス その3



コンサルタント 安藤仁志

1960年、新潟市に生まれ、うお座。O型。大学卒業後、日本メナード化粧品に入社。主に海外事業に携わる。タイ、中国、マレーシアに駐在した経験は、現地法人の立ち上げから経営、現地法規制へのコンプライアンス業務、海外代理店の開拓・営業、海外マーケティングまで幅広い。退社後は、海外への進出を希望する企業へのコンサル業を営む。

PAGETOP