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【海外進出コラム】 海外取引なのか、海外進出なのか? 弁護士 吉崎 猛

弁護士の吉崎です。海外展開についての法律に関わるコラムを何回かに分けて連載させて頂きます。今回は、細かいことよりも、まずは視点の「整理」から。

1.「海外取引」と「海外進出」の整理

 海外絡みの取引案件で相談に来られた企業の方からお話を伺う際、私は「海外取引」なのか「海外進出」なのか?また、なぜそうする必要があるのか?を最初に整理することにしています。行う内容によって、法的に注意すべき観点や重視すべき点が違うからです。

「海外取引を行う」、「海外に子会社や合弁会社を設立する」など海外と関わる事業を行うときに、貴社が行おうとしていることが(1)「海外取引」に関わることなのか、それとも(2)「海外進出」に関わることなのか、という点を整理すべきです。それにより、契約が重要であったり、現地法の理解が重要であることが分かってきます。

2.契約の整備が重要になるか、現地法の理解が重要になるか

(1)は貴社が日本にいながら外国企業と何らかの取引をすることで、(2)は貴社が外国に現地法人を設立したり(現地パートナーなどと合弁会社を設立することもあるでしょう)、外国企業を買収したりして、現地で直接事業展開を行うことです。

(1)で重要な点は、例えば、製品販売契約、販売代理店契約、ライセンス契約など取引の性質に応じた適切な契約(「貴社に有利な契約」とも言えます)を外国企業と締結することです。そのときに、契約の準拠法を日本法とし、日本の仲裁機関(または裁判所)で紛争解決を行えるようにすることが、国内取引契約に近いものにする第一歩と言えます。もちろん、海外取引は国内取引と違いますから、契約の準拠法を日本法とすれば国内取引と同じというわけにはいきません(例えば、取引先の相手国の法令に沿って契約内容を定めないと代金やロイヤルティの送金が困難になることがあります。)

(2)は現地に進出するわけですから、法人の設立や事業展開について現地法が適用されるため、現地法を理解する必要があります。例えば、現地に投資することになるため、現地の外資規制法令に注意する必要がありますし(貴社の100パーセント出資では進出できない業種かもしれません)、合弁企業を設立する場合でも、合弁契約の準拠法を現地法にしないといけない場合もあります。また、現地企業で労使紛争や知的財産権に関する紛争が発生した場合、現地の労働法令や知的財産法令などを理解する必要があります。

LAPITAアドバイザー
東京桜橋法律事務所 弁護士    吉崎 猛
早稲田大政経学部及びペンシルベニア大ロースクール(LLM)卒。
日本国及びカリフォルニア州弁護士。現在は東京桜橋法律事務所のパートナー弁護士として、主に日本企業の海外取引・海外進出案件、外国企業の対日投資案件等を中心に取り扱う。

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