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【ブラジルコラム】ブラジルの朝市と軽スナック・パステル(酒井芳彦)

ブラジルは多民族の移住で構成され、日本からの移住は1908年の笠戸丸から始まる。
今年は106年に当たり、戦前の農業を中心とした移住、戦後は技術移住で多くの日本人がブラジルに渡った。早日系人は、4世代、五世代目に入っているが、ブラジルの食文化を大きく変化させたのも長い歴史の中、日系人の功績が大きいと言える。

ブラジルの食は、家禽類の肉(牛肉、豚肉、鶏肉)を主食とし、魚介類の消費は肉と比較すると極端に少ない。牛肉の年間消費量は,一人当たり約37kg、豚肉は、主にハム・ソーセージに加工されその消費量も年間一人当たり35kg程度を消費している。

昔の食生活は、野菜を摂取するのが少なかったと聞くが、日系人が長年歳月をかけテラロッサ(赤色土)の土を野菜栽培に適する様土壌を改良継続し、野菜畑面積を拡大する事で現在豊富な品数の野菜を栽培し、日系人自らが野菜の消費を啓蒙して来たと聞く。野菜の消費傾向はこの数十年であり、今日ブラジル人の健康嗜好から生野菜をサラダで食べるのも平気となった。

ポルトガル語(ブラジル語)で、曜日の言い方はスペイン語と違う。月曜日が第2市、火曜日が第3市、水曜日が第4市、木曜日が第5市、金曜日が第6市で表現する。土曜日、日曜日はスペイン語と同じ表現である。日本でも伝統的な町に朝市が立つが、ブラジル・サンパウロでは約50チームの朝市集団が、毎日(週末含め)住宅街の道路に朝市を朝5時頃より、午後2時頃まで、店(露店)を構える。そこで売られている品は、日系の農家が栽培した朝どりの野菜、卵、切り花などで、肉類、魚類、果物類はブラジル人の露天商が多い。スーパーが勿論発達した国であるが、生物の鮮度、品質、サービスの点でスーパーで売られている品物より勝っているので、消費者は露店(FEIRA)で毎週一回は利用する。この露店で長年日系の農家の人が自ら野菜を販売して来たのが、今日の野菜消費に大きく貢献していると言えるであろう。露店は週一回、毎回同じ場所で開くので、50チームとした場合、サンパウロ市内・郊外で約350か所で、毎日市が開かれる計算になる。大変便利な日常生活習慣である。

この露店の入口、或いは出口に必ずや日系人が行っているパステル(PASTEL)屋が立つ。パステルとは元来中国料理から由来したものを日系人が食べやすく、美味しく、そしてブラジル人嗜好にあった形に変えたと言われている。小麦、塩、油、サトウキビから出来た蒸留酒、水を混ぜ合わせ、形としては、長方形(縦・横18X10cm程度)の大きな餃子と考えれば良い。その生地の中に、牛のひき肉、鳥肉、ヤシの茎、茹で玉子などを入れて、油で揚げたものである。中味(具)のバラエティで値段もまちまちであるが、一個4~6レアルであるので、180円から270円程度である。

パステルの大きさにもよるが、一個食べれば腹ごしらえは出来る。買い物客は、露店で買い物が終わって家に帰る前に、パステルを食べて帰る、或いは家に持ち帰って家族と食べたりする。パステルは、カリッとした揚げ物で風味もあり、ブラジル人大好きな軽スナックである。

この国民食とも言えるパステルを今日普及させたのも日系の多くの人たちである。残念ながら日本でパステルを売っている店は未だ見たことがない。日本人が好きになるスナックと思うので、日本で起業するチャンスが大きいと思う。


sakai.pngのサムネイル画像LAPITA専任アドバイザー
酒井 芳彦
(前 味の素株式会社中南米本部長・理事)

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