CRS 埼玉が展開するマレーシア中古部品ビジネス
◆マレーシア中古部品市場の魅力
「多くの中古部品の在庫がマレーシアに集まっており、さまざまな部品を同じ場所で見つけられる」。それがマレーシアで中古部品ビジネスを行う魅力であると、CRS（マレーシア）の内野ダイレクターは考えている。
今後の中古部品業界では、中古部品の供給減少が予測されている。日本では高性能化、ランニングコストの低下に少子化という社会的要因も加わり、軽自動車を利用する人が増えていること、自動車の耐久性向上、環境の整備などから、自動車の使用年数が少しずつ伸びていることがその要因だ。
一般財団法人自動車検査登録情報協会が発表した「我が国の自動車保有動向」によれば、2013 年の、軽を除く乗用車の平均使用年数は1 台あたり12.58 年となっている。
そのためマレーシアの中古部品会社においても、中古部品を日本からではなくニュージーランドやオーストラリアなどの海外から仕入れるケースが目立つようになってきている。
◆ポイントは安定した仕入れ先確保
CRS マレーシアの事業所は、マレーシアで最も大きな中古車部品集積地であるKlang（クラン）にある。2 エーカー（約8000 平方メートル）の中古部品置き場を設置し、少し離れた場所に、第2 事業所と呼ばれる1 エーカーほどの倉庫もある。コンテナが日本から到着すると、部品を種別ごとに並べ、エンジン、ハーフカット、ノーズカットに関してはシステム入力し、個別登録を行って在庫管理を行っている。重量ベースでは中古エンジンが一番多い。
中古部品業界では、仕入れが最も重要であり、日本国内で安定した仕入れ先を確保することが必要不可欠だ。日本からの中古部品を安定して確保できる体制が構築されているということが、CRS マレーシアの一つの強みだ。CRS マレーシアが日本から輸入するコンテナ数は安定して平均月16 本ほどで、親会社となるCRS 埼玉からのものが40％、それ以外の日本のサプライヤーからのものが60％となっている。
◆多様なマレーシアの中古部品バイヤー
私がCRS マレーシアを訪問したとき、ナイジェリア人やパキスタン人、マレーシア人のバイヤーたちが、中古部品置き場をブラブラ歩きながら物色していた。そこに並べられている日本から届いた中古部品を実際に見るためだ。コンテナが日本から届いた瞬間を狙うため、一日中部品置き場に滞在しており、CRS の従業員と見間違うような業者もいると聞く。それだけ日本からの中古部品需要が高いのだろう。
CRS マレーシアに来るバイヤーの国籍は、マレーシア人が30％、それ以外の国籍が70％ほどだ。マレーシアは現在、アジア最大の中古部品取引市場となっている。ハブであるマレーシアに集約されたあと、日本から輸入された中古車部品の80％ほどが世界各国へ再輸出されている。再輸出先はタイ、ミャンマー、パキスタン、UAE（シャルジャ）、南アフリカ、ナイジェリア、などアジア近隣諸国、中東、アフリカが中心だ。マレーシア以外の国籍のバイヤーは再輸出先の国籍の人間が多く、マレーシアで購入した中古部品を自国の業者へ販売するブローカーの役割をしている。
一方、CRS マレーシアに来ているマレーシア人バイヤーは、4 タイプのプレーヤーに分かれる。いつも周辺の中古部品輸入会社を巡回している、ランナーと呼ばれているブローカーが50％、卸業者者から中古部品を購入してエンドユーザーに小売りしているホールセラーが40％、残りの10％は修理工場業者とエンドユーザーだという。エンドユーザーは少数だが、小さなアクセサリーなどを直接購入しに来ているそうだ。
◆CRS マレーシアの展望
内野ダイレクターは、今後の課題は「海外への直接輸出とリサイクルビジネス」だと言う。中古部品は、ブローカーの手を通じて他国へ再輸出されている。これをCRS マレーシアが直接海外に輸出することで、さらに現地顧客の価格と品質のニーズに応えることができるためだ。すでに、数カ国へは直接輸出した実績もある。今後その流れを拡大させていきたいと意気込む。
また、将来はマレーシアでも自動車リサイクルビジネスが発達すると考えている。実際、現地では相当な事故車でも直してしまっており、マレーシアには自動車解体工場が存在しない。現在、CRS マレーシアの第2 事業所では中古エンジンのスクラップを始めた。部品を取り除いた上で、鉄、プラスチック、アルミ、真ちゅう、ハーネスなどに分ける。それを将来の新たなリサイクルビジネスにつなげていくという考えだ。
中古部品の集積所としてのマレーシアの魅力、また、高い国際競争力と品質を持つ日本中古部品をうまく活用し、CRS マレーシアのような、海外直接販売などグローバルな視野を持った中古車部品流通を再構築していくことで、日本製中古部品ビジネスはさらに大きな産業へと発展を遂げる可能性を秘めていると現場を訪問して感じた。
※本記事は、レスポンスでのコラム「川崎大輔の流通大陸」の記事の一部を編集、
川崎 大輔 （かわさき だいすけ）
香港の会社に就職後、アジアに8年駐在し、日本に帰国。ベンチャー企業の経営企画を経て、中古車企業のガリバーインターナショナルで海外事業部の立ち上げ。アメリカ事業、インド事業、タイ事業の立ち上げと海外事業を担当。2015年半ばよりAsean Plus Consulting LLCにて日系企業のアジア進出サポートを開始。
経営学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア研究センター外部研究員
JTBグループが国内外の独自のパートナーシップの構築により日本企業の海外進出をサポートするLAPITAでは、中古車買取販売のガリバーインターナショナルの海外事業を担当してきた川崎 大輔氏とともにASEAN地域の中古車市場の調査・視察のご支援をいたします。
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