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【海外進出コラム】「約束してから渡しましょう。。。」(秘密保持契約の必要性) 弁護士 吉崎 猛

弁護士の吉崎です。前回の私のコラムでは、「海外取引」と「海外展開」の整理についてお話ししましたが、今回は、「海外取引」にあたって、まずは「秘密保持契約」を締結することの必要性をお話しします。

1.海外の取引相手と取引についての本契約を締結するときは、本契約に秘密保持条項を定めることが一般的です。

とはいえ、取引は急に始まるものではなく、打ち合わせや情報・資料、製品サンプルなどのやりとりした後で始まります。そのため、取引はまだ始まっていないのに取引を行うかどうか検討するため、貴社から製品仕様書、価格表、製品サンプルなどを取引相手に提供することがあります。

ここが問題です。その後、条件が合わず取引しないことになったらどうなるでしょうか?

取引についての本契約は締結していませんので、秘密保持に関する約束事はありません。貴社の重要情報や資料を相手方に提供している場合、「取引倫理」からすれば相手方は貴社に返還すべきでしょうが、相手方に「返還義務」があるとまでは言えないでしょう。原本や原物を返してきたとしても、コピーしたり、解析しているかもしれません。契約していないですからコピーや解析に対するプレッシャーもありません。

従って、取引を開始する前に「秘密保持契約」(「NDA」と言っているものです)を締結する必要があります。

2.秘密保持契約を締結するタイミング

上記1からすると、秘密保持契約を締結するタイミングは本取引を開始する前段階で行う必要があり、取引のタイミングを逃さないよう時間をかけずに締結する必要があります。

3.自社からすぐ提示できるようひな型を準備

とはいえ、相手方から秘密保持契約案を提示されるのを待っていると、いつまでたっても出してこない可能性もありますし、出してきても相手方が提示する案は自分に有利な内容になっていることがほとんどです(例えば、もっぱら貴社が重要情報や資料を相手方に提供するのに、貴社だけが秘密保持義務を負う内容となっているなど。)。

また、相手方の案文を修正して貴社に有利な内容を盛り込んでいくのは時間とエネルギーが必要です。

ですので、あらかじめ貴社で日本語版と英語版の秘密保持契約の内容を検討し、理解した上で、ひな型を作成しておくことをお勧めします。ひな型を準備しておくことで、引き合いがあったり、取引交渉が始まる段階であわてずに対応することができます。

LAPITAアドバイザー

東京桜橋法律事務所 弁護士     吉崎 猛

早稲田大政経学部及びペンシルベニア大ロースクール(LLM)卒。
日本国及びカリフォルニア州弁護士。現在は東京桜橋法律事務所のパートナー弁護士として、主に日本企業の海外取引・海外進出案件、外国企業の対日投資案件等を中心に取り扱う。

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